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 今年の春に、山形新幹線の「つばさ」に、そしてこの9月に秋田新幹線の「こまち」に乗ってきました。

 ご承知のように、この両新幹線はミニ新幹線と呼ばれており、在来線の狭軌のレールをを撤去して、同じ路盤にフル規格の新幹線と同じ標準軌のレールを敷設し直した路線を、標準軌の車輪に、在来線と同じ規格の車体(従ってトンネルなども従来のものでOK)を載せて走行し、「こまち」は盛岡駅で、「つばさ」は福島駅でそれぞれ東北新幹線の「やまびこ」に連結をして、東京駅まで直通で乗り入れているものです。

 しかし秋田、山形新幹線の同じ路線を普通電車も共用しているとのことで、一体どんなシステムで運行しているのか以前から非常に興味があり、2回に分けて実際に乗車して見てきました。

1.奥羽本線と田沢湖線 (⇔:標準軌、→狭軌)
  (奥羽本線)  福島 ⇔ 山形 ⇔ 新庄  → 大曲  ⇔ (および→) 秋田
  (田沢湖線)               盛岡  ⇔ 大曲

2.山形新幹線「つばさ」
 上記1.の 福島⇔新庄 間の奥羽本線を狭軌から標準軌に敷設しなおした区間を走行。またこの区間は、台車のみ標準軌に取り替えた普通電車も、同じ路線を共用して走行。当然ながら、この普通電車はJRのほかの区間では軌道(ゲージ)が合わず、走行不可です。なおこの区間は、標準軌の複線、単線が混在しています。

3.秋田新幹線「こまち」
 上記1.の 盛岡⇔大曲 間の田沢湖線 および 大曲⇔秋田 間の奥羽本線 の狭軌を標準軌に敷設し直した区間を走行。また台車のみ標準軌に取り替えた普通電車は、 盛岡⇔大曲 の区間のみ共用して走行しているが、この区間は単線。大曲→秋田 間については、後述。

4.新庄駅で奥羽本線が分断
 新庄→大曲→秋田 は従来の在来線の狭軌を、直通電車が走行しており、従って新庄駅構内で、従来一本につながっていた線路が標準軌と狭軌で分断されている。

5.大曲⇔(および→)秋田 の区間
 この区間は非常に特殊で、狭軌を標準軌に敷設しなおした軌道(単線)と従来の狭軌の在来線(単線)が平行してある変則複線区間で、「こまち」は標準軌を、新庄からの普通電車は、狭軌側をそれぞれ走行しています。ところが、この区間の一部が更に変わっています。この区間では「こまち」が対向できる停車駅がないため、在来線の狭軌に更にレールを1本追加した3条軌道(標準軌も狭軌も走行可能)を狭軌の区間に敷設(10Km余りの区間)して、この区間で「こまち」を走行させながら対向させています。実際、秋田から「こまち」に乗っているときに反対側の線路(3条軌道)を「こまち」が走行しながらすれ違いました。

 以上が、秋田・山形両ミニ新幹線の概要ですが、設備投資が余り要らず、しかもそれなりの高速化(東京へ)が計れる、現実的な解決案である苦肉の策を考案した、山形県、秋田県およびJRの関係者の知恵に敬服する次第です。